2011年7月29日金曜日

●金曜日の川柳 樋口由紀子


樋口由紀子
  







大阪市都島区に鳴るギター

中尾藻介 (なかお・もすけ) 1917~1998

昭和42年の作。そういえばギターの音色を久しく聞いていない。確か我が家にもギターはあったはずだがどこにいったのか。捨てたのか、それとも物置の奥にでも仕舞われているのだろうか。以前は窓辺でギターを弾く姿は映画のワンシーンにもよく使われたし、身近でもよく目にした。ギターを弾く姿は絵になり、その音色は哀愁を誘う。(と思っていた。)

作者は仕事か用事を終えたあとに、偶然耳にしたギターの音色に弾いている人を思い、同じ感慨にふけったのだろう。

この句を最初に見たときは「大阪市都島区に」が五七で、地名をこんな風に詠めるのだと感心した。都島区は大阪市の北東部に位置し、区の北部には淀川が流れている。「に」が効いている。『中尾藻介川柳自選句集』(1987年刊)所収。

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